将来の安定した資産形成を目指すなら、つみたてNISAは魅力的な選択肢の一つです。
つみたてNISAは長期的な視点での運用戦略が成功の鍵を握ります。
しかし、投資初心者の方は、将来的にどのように運用したらよいのかわからない方もいるでしょう。
本記事では、つみたてNISAを利用して10年後、20年後にどのように資産を築くか、そのポイントと運用方法について徹底解説します。
将来のライフプランに向けて着実に資産を育てたい方は、ぜひ本記事を参考にしてつみたてNISAをはじめてみましょう。
つみたてNISAとは
まずは、つみたてNISAの基本的な情報について、次の3つの点を解説します。
- ・2018年に開始した少額投資非課税制度
- ・年間40万円を上限に長期で資産形成が可能
- ・一般的なNISAとの異なる点
つみたてNISAを利用する前に、それぞれについて確認して理解を深めておきましょう。
2018年に開始した少額投資非課税制度
つみたてNISAは、2018年にはじまったプログラムで、将来の資産形成を促進し、少額の投資に対して課税を軽減するためのものです。
つみたてNISAの選択可能な商品は、手数料が抑えられていることや、頻繁な分配金の支払いがないなど、長期的な視点での資産形成に適した特定の投資信託などに限られています。
そのため、投資初心者をはじめ幅広い年齢層の方々が手軽に利用できる仕組みです。
年間40万円を上限に長期で資産形成が可能
つみたてNISAでは、毎年最大で40万円までの積立投資に対して得られる利益が、最長で20年間非課税となります。
投資により生じた利益には、20.315%の税金が課されますが、つみたてNISAを活用すると20年間は税金がかかりません。
そのため、本来なら差し引かれるべき税金分を、そのまま運用にあてることができます。
一般的なNISAとの異なる点
つみたてNISAが一般的なNISAと異なる点は、次の表のとおりです。
つみたてNISA | 一般NISA | |
---|---|---|
非課税枠 | 年間40万円まで | 年間120万円まで |
非課税期間 | 最長20年間 | 最長5年間 |
購入方法 | 積立投資 | 積立投資・一括投資 |
対象商品 | 長期の積立、分散投資に適した一定の投資信託 | 日本株・外国株・投資信託 |
投資可能期間 | 2042年12月末まで | 2023年12月末まで (2024年より新NISA制度が開始予定) |
対象年齢 | 20歳以上 (口座を開設する年の1月1日時点) |
20歳以上 (口座を開設する年の1月1日時点) |
投資の手間 | 自動で積立 | 自身で購入・自身で売却 |
引き出し | 制限なし | 制限なし |
つみたてNISAは、定期かつ積立方式の投資が唯一の選択肢で、金融機関により購入可能な銘柄や最低取引金額は異なります。
一般NISAでは、投資方法は利用者が自ら選択できます。
まとまった金額を一度に投資したり、積み立てを選んだりも可能です。
また、非課税の期間も異なります。つみたてNISAでは、最長20年間、年間40万円までの投資における運用益や分配金が非課税となります。
一方で、一般NISAでは最長5年間、年間120万円までの投資における運用益、配当金、分配金が非課税対象です。
投資対象となる金融商品は、つみたてNISAでは金融庁が長期、積立、分散の観点から適していると判断した公募株式投資信託などが対象です。
一般NISAでは上場株式、公募株式投資信託などが対象となります。
つみたてNISAも一般NISAも、投資による運用益が非課税となる利点がありますが、同一年での併用はできないため、選択する際には慎重に考慮しましょう。
どちらが適しているかは個々の投資目的やライフスタイルによります。
長期的な資産形成を望む方にはつみたてNISAが適している一方で、自由な選択肢を求める方には一般NISAが適しているかもしれません。
好みやニーズにあわせて、最適な選択肢を検討してみましょう。
つみたてNISA運用シミュレーション
積立投資をはじめる際には、目標設定が大切です。ここでは、つみたてNISAを10年間運用した場合と、20年間運用した場合のシミュレーション結果について解説します。
つみたてNISAの運用シミュレーションを通じて、異なる積み立て額や運用利回りにおける成果をリアルにイメージしてみましょう。
つみたてNISAを10年運用した場合
【毎月1万円を投資した場合】
運用利回り | 10年後の資産総額 |
---|---|
1% | 1,261,499円 |
3% | 1,397,414円 |
5% | 1,552,823円 |
【毎月2万円を投資した場合】
運用利回り | 10年後の資産総額 |
---|---|
1% | 2,522,997円 |
3% | 2,794,828円 |
5% | 3,105,646円 |
【毎月3万円を投資した場合】
運用利回り | 10年後の資産総額 |
---|---|
1% | 3,784,496円 |
3% | 4,192,243円 |
5% | 4,658,468円 |
毎月1万円をそのまま10年間積み立てた場合、資産総額の合計は120万円です。
しかし、年利3%で運用すると運用益は197,414円、年利5%で運用益は352,823円となります。
毎月1万円でも、長期的に積み立てることによる複利効果で、資産を効率的に増やせるでしょう。
つみたてNISAを20年運用した場合
【毎月1万円を投資した場合】
運用利回り | 20年後の資産総額 |
---|---|
1% | 2,655,612円 |
3% | 3,283,020円 |
5% | 4,110,337円 |
【毎月2万円を投資した場合】
運用利回り | 20年後の資産総額 |
---|---|
1% | 5,311,225円 |
3% | 6,566,040円 |
5% | 8,220,673円 |
【毎月3万円を投資した場合】
運用利回り | 20年後の資産総額 |
---|---|
1% | 7,966,837円 |
3% | 9,849,060円 |
5% | 12,331,010円 |
毎月1万円を20年間運用すると、資産総額の合計は240万円です。
一方で、年利3%で運用した場合の運用益は883,020円になり、元本と合わせると3,283,020円になります。
年利5%で運用すると4,110,337円となり、毎月1万円をそのまま積み立てた場合と比べると、約1.7倍も資産が増えます。
投資でいくらお金が増えるかは投資先次第です。
そのため、必ずシミュレーションどおりに資産が増えるとは限らず、元本割れする可能性もありえますが、基本的には利回りが大きくなるほど複利の効果で、資産の増え方も大きくなります。
つみたてNISAは20年の非課税期間があるため、大きな複利効果が期待できるでしょう。
つみたてNISA20年目以降の運用方法
つみたてNISAが提供する非課税特典は最長20年間にわたりますが、その先も資産を効果的に運用し続けることが大切です。
20年目以降の運用方法について、検討すべきポイントは次のとおりです。
- ・売却し現金にする
- ・新たにつみたてNISAをはじめる
- ・通常の証券口座に移行し続ける
- ・iDeCoに移し替える
つみたてNISAの非課税期間が終了したあとそのままにしておくと、運用益に対して税金がかかります。
意図せず課税されることのないよう、非課税期間が終わったあとの対処方法の理解が大切です。
各ポイントの解説を、ぜひ参考にしてください。
売却し現金にする
つみたてNISAは、自由に売却して現金化できます。
課税口座へ移す前に売却すれば、譲渡益課税を回避し、税金の負担を軽減できます。
現金化する場合は、必ずしも20年間待つ必要はありませんが、本来つみたてNISAは長期的な視点での投資を想定した制度です。
そのため、長期間保有しないと複利効果を十分に得られません。
とくに投資経験が浅い方は、元本割れが生じるかもしれないと焦って売却する傾向にあります。
しかし、長期間の保有により元本割れが解消される可能性もあるため、できるだけ長い期間運用することをおすすめします。
新たにつみたてNISAをはじめる
つみたてNISAでは、ロールオーバーはできませんが、新たにつみたてNISAで積立投資をおこなうことは可能です。
運用で得た利益を現金化し、それを元手に新しいつみたてNISAをはじめることも一つの選択肢です。
新たにつみたてNISAをはじめた場合でも、年間の投資限度額は変わらず40万円までであるため、それ以上の額を投資する場合は、課税口座を利用する必要があります。
通常の証券口座に移行し続ける
つみたてNISAの非課税期間が終了したあと、投資商品を売却せずに引き続き運用を希望する場合、特定口座や一般口座など別の口座を利用して運用を継続できます。
どちらの口座も課税対象となりますが、口座の移し替えには特別な手続きは不要です。
つみたてNISA口座の資産を課税口座に移す場合、非課税期間中の利益については課税されません。
そのため、非課税期間中に保有資産の価値が増加していた場合は、口座の移動により課税対象となることなくその利益を保持できる点はメリットです。
ただし、保有資産の価値が減少していた場合は、デメリットが生じるかもしれません。
たとえば、40万円をつみたてNISAで投資し、20年間の運用期間を終えて評価額が20万円に下がっていた場合、利益は出ていないため、税金が課されることはありません。
しかし、課税口座に移管したあとに評価額が上昇し、購入時と同じ40万円に戻ったため売却をした場合は、実際には利益は出ていませんが、口座を移してからは20万円の利益が出ています。
そのため、利益分の20万円については課税されてしまいます。
iDeCoに移し替える
老後を見すえて資産形成をしたい方は、資産をiDeCo口座に移し替えて運用を継続する方法も選択肢の一つです。
iDeCoとは個人型確定拠出年金のことで、企業の提供する企業型確定拠出年金とは異なり、個人が主体となって加入し、自身で拠出金を積み立てていく制度です。
ただしiDeCoには加入できる年齢に制限がある点に注意しましょう。
iDecoに加入し掛金を拠出できるのは60歳までで、運用している資産は原則として60歳以降でないと引き出せません。
任意のタイミングで資産を引き出せないことはデメリットですが、iDeCoへの拠出金は全額が所得控除の対象となるため、一般的な投資信託よりも効率よく資産を運用できる点がメリットです。
原則60歳まで引き出せない代わりに、税制面での優遇がつみたてNISAよりも多いため、老後の資産形成を重視したい方は、iDeCoを検討してみましょう。
つみたてNISAの特徴
つみたてNISAの特徴は、次の3つです。
- ・投資初心者でも始めやすい
- ・20年間の非課税期間がある
- ・好みのタイミングで解約可能
それぞれ解説します。
投資初心者でも始めやすい
つみたてNISAでは、最低投資額が比較的低いため、少額から投資をはじめられます。
金融機関により異なりますが、毎月1,000円、1万円など、生活に負担をかけずに長期的な資産形成が可能です。
つみたてNISAは途中から積立額の変更も可能なため、無理のない金額ではじめてみて、慣れてきたら少しずつ増やしていくのもよいでしょう。
また、つみたてNISAの対象商品はすべて購入手数料が無料です。
金融機関からの引落しや定期自動入金の引落手数料も無料である場合が多いため、低コストで利用できます。
コストをかけずに利用できる点も、つみたてNISAが投資初心者に向いている特徴の一つといえるでしょう。
20年間の非課税期間がある
つみたてNISAの最大のメリットは、最長20年間にわたる非課税期間が設けられていることです。
利益が非課税となるため、その成果が次第に元本にプラスされ、更なる利益を生む好循環が期待できます。
長期間にわたる非課税期間は、市場の変動や不確実性に対するリスクヘッジにもなります。
一時的な市場の変動があったとしても、長期の視点で投資をおこなうことで、リスクを分散しやすくなるでしょう。
好みのタイミングで解約可能
つみたてNISAは20年間の非課税期間がありますが、20年を待たずに途中解約もできます。
途中で解約する場合でも、売却益は非課税です。
ただし、含み損を抱えている状態で解約すると損失が出てしまい、運用益が非課税になるというつみたてNISAのメリットを活かせません。
NISA口座では、特定口座のように損益通算ができないため、損失を抱えて売却しても、計上されるのは実損のみです。
そのため、なるべく利益が出ているタイミングで解約が望ましいです。解約する理由ができたときも、つみたてNISAを解約するベストタイミングの一つといえます。
たとえば、子どもの進学費や住宅購入費など資金が必要になったとき、別の金融商品に乗り換えたいときなど、明確な理由が生じたタイミングでつみたてNISAを解約するのもよいでしょう。
解約とは別に、積立設定の解除という手続きもあります。こちらは、つみたてNISAで買い付ける投資信託の積立設定の解除をおこなうことです。
たとえば、毎月5日に1万円ずつ積み立てるように設定していたものを、何の設定もない状態に戻すことです。
解除をおこなうと、それ以降の積立が停止されるため、新たな投資信託の購入はおこなわれませんが、あらためて積立設定をすると再開できます。
つみたてNISAの注意点・ポイント
非課税でお得に資産形成が可能なつみたてNISAですが、注意しておきたいポイントがあります。
- ・元本割れする可能性もある
- ・長期・積立・分散投資を意識
- ・価格変動を気にしすぎない
これからつみたてNISAをはじめる方は、注意点についても十分に理解しておきましょう。
元本割れする可能性もある
つみたてNISAの適用対象である投資信託などは、金融庁に長期の積立や分散投資に適したものとして届け出がされています。
しかしこれらの商品は元本保証がないため、投資元本に対して評価額が下がる可能性があります。
元本割れが生じた場合、その損失を取り戻すまでに相当な時間がかかるかもしれません。
つみたてNISAの制度は長期投資が前提とされていますが、市場の状況により投資元本を下回ることを考慮して、慎重に投資商品を選びましょう。
長期・積立・分散投資を意識
つみたてNISAは最長20年間の非課税期間を提供しているため長期間保有し、積み立てていくことで、非課税期間を最大限に活かせることが利点です。
非課税期間が長ければ長いほど、資産の成長に対して課税されないため、賢明な運用が期待できます。
長期間にわたる積立投資は複利の法則を活かせるため、運用益が元本にプラスされ、次第にその成果が加速度的に増加するメリットがあります。
また、つみたてNISAでは、分散投資をする意識も大切です。
資金を複数の投資対象にわけて投資することで、特定のリスクや市場の変動に対する影響を軽減できます。
一つの投資先が不振な場合でも、ポートフォリオ全体に影響が及びにくくなる点がメリットです。
つみたてNISAの対象商品には、長期の積立や分散投資に適した投資信託が選定されているため、このようなメリットを活用して効率的な運用をおこなえるでしょう。
価格変動を気にしすぎない
価格変動を過度に気にしすぎることは、投資家にはストレスを生む原因となり、冷静な判断が難しくなることがあります。
長期的な視点を持つことで、短期の市場変動に対しても比較的冷静な判断ができます。
投資先の価格が一時的に下落したとしても、長期的な視点で見ればその変動は小さな揺れに過ぎません。
過度な価格変動への反応は感情に左右されがちです。冷静な判断を保つためには、投資戦略や目標を確認し、感情的な判断に流されないよう心がけることが大切です。
つみたてNISAに関するよくある質問
つみたてNISAに関するよくある質問をまとめました。
- ・つみたてNISAの利用条件は?
- ・複数の口座でつみたてNISAの口座開設は可能?
- ・一般NISAとつみたてNISAは併用できる?
それぞれ解説します。
つみたてNISAの利用条件は?
原則つみたてNISAの口座は誰でも開設可能ですが、年齢などの要件があります。
つみたてNISAを利用できるのは、口座を開設する年の1月1日時点で満18歳以上の個人の方です。
たとえば、2024年に口座を開設する場合、2024年1月1日に満18歳である必要があります。
複数の口座でつみたてNISAの口座開設は可能?
一つの金融機関で開設できるNISA口座は、一つのみです。
たとえば、証券会社でNISA口座を開設した場合は、ほかの証券会社や信用金庫、銀行などでは口座を開設できません。
NISA口座の開設を複数の金融機関で申し込んでしまった場合、最初に開設したNISA口座以外は、税務署から開設の確認が得られないため、重複して申し込まないよう注意しましょう。
ただし、一人が一つの口座のみ開設できるのは一年間においてという意味です。
翌年に別の金融機関にNISA口座の変更は可能です。
個人の税金の申告は、1月1日から12月31日までを一年として計算するため、NISA口座もその期間にあわせて1月1日から12月31日をベースにして、一年ごとの変更が認められています。
一般NISAとつみたてNISAは併用できる?
NISA口座は一人につき1口座のみ利用可能なため、一般NISAとつみたてNISAの併用はできません。
それぞれの非課税枠や非課税期間、取扱商品などを確認し、自身の投資スタイルや目的にあわせて選択しましょう。
まとめ
今回は、つみたてNISAの10年後、20年後の運用方法と注意点などについて解説しました。
つみたてNISAは、運用期間が長いほど利益が増えていく可能性が高い仕組みであり、利益に対して税金がかからないことが大きなメリットです。
投資する資産や地域を分散できる投資信託を選べるため、一つの金融商品に投資する場合と比べてリスクを抑えながら運用益を期待できます。
また、つみたてNISAはいつでも解約可能ですが、あまりにも短期間で売却するのはおすすめできません。
利益が出てすぐに売却すると、複利効果をあまり得られないからです。
つみたてNISAを利用する場合、自身のライフプランや理想の資産運用を考え、できる限り長期で積立運用をしましょう。
<参考>
つみたてNISA