重度の膝関節の疾患に悩んでいる方には、疾病のある膝関節を取り除き、人工関節に置き換える「人工膝関節置換術」がおすすめです。
しかし、関節を人工物に置き換える手術に対して、不安や疑問を抱えている方も少なくないでしょう。手術するのであれば、評判のよい名医に執刀を担当してもらいたいと考えるのは当然です。
この記事では、人工膝関節置換術の評判が高い名医や、人工膝関節置換術のメリット・デメリットを解説します。
人工膝関節置換術の評判が良い名医3選

人工膝関節置換術は、損傷や変形がある膝関節を人工膝関節に置き換える手術です。日本国内でも症例実績の多い手術ですが、執刀医師に高い技術が求められる施術でもあります。
ここでは、人工膝関節置換術の評判がよい、3人の名医を紹介します。
本田病院:松本忠重 先生
松本忠重先生は、東京都目黒区の本田病院の院長を務めています。膝や股関節の人工関節置換術の経験が豊富で、患者の負担を軽減する「最小侵襲手術(MIS)」といわれる専門的な治療をおこないます。
整形外科分野の高い知識と技術から、高齢者でも早期の社会復帰を見込める、専門的な手術を選択されています。
浅草病院:望月義人 先生
浅草病院の整形外科を担当する望月義人先生は、蓄積された知識と技術を認められ、同病院の人工関節センター長を務めています。施術では、高い技術を必要とする「最小侵襲手術(MIS)」を選択されており、患者の負担軽減を第一に考える医師です。
また、患者の大部分を占める高齢者の方の早期社会復帰のため、極力、術後の筋力低下を少なくする工夫がされています。
東京医科大学病院:山本謙吾 先生
山本謙吾先生は東京医科大学病院の病院長を務めています。豊富な関節手術の経験から、患者さんを総合的にとらえることをモットーに診療しています。
加齢による関節障害のみならず、スポーツ整形外科にも精通されており、豊富な知識・技術が信頼を裏づけています。
そもそも人工膝関節置換術とは?

人工膝関節置換術とは、関節リウマチや変形性膝関節症により変形した膝関節を除去し、人工膝関節に置き換える手術を指します。
ここでは、人工膝関節置換術の方法についてくわしく解説します。
膝関節の損傷を取り除いて人工膝関節を固定
関節リウマチや変形性膝関節症により膝関節が損傷すると、膝のスムーズな可動に支障が生じます。
人工膝関節置換術では、損傷、変形した膝関節を取り除き、金属やセラミック、樹脂で成形された人工膝関節を骨の上に固定します。人工膝関節は、正常な関節と同様に可動するため、次のようなパーツで形成されています。
- 大腿骨部
- 頸骨部
- 膝蓋骨部
膝関節が損傷により変形すると、膝周囲の筋や腱に負荷がかかり筋収縮や炎症による痛みを伴います。とくに、関節リウマチにより骨が変形している場合、強い痛みにより日常生活も困難になるため、人工膝関節置換術は有効です。
人工膝関節置換術の施術後は、歩行能力の改善と膝の痛みの軽減が期待できます。
人工膝関節置換術の方法
人工膝関節置換術の方法には、大きく分けて次の2種類があります。
- 全置換術(TKA)
- 部分置換術(UKA)
関節や骨の損傷・変形の程度により手術方法が選択されます。
また、近年では、より低侵襲の手術で患者の負担を軽減する最小侵襲手術(MIS)もおこなわれています。MISは、皮膚を切開する範囲が標準的な手術の約半分程度と小さく、手術後の早い日常生活への復帰が期待できます。
ここでは、基本の手術方法となる、全置換術(TKA)・部分置換術(UKA)について解説します。
全置換術(TKA)
メリット | デメリット |
---|---|
手術の適用範囲が広い症例実績が多く安定した手術が可能 | 手術による侵襲範囲が大きい日常生活への復帰に中長期の期間が必要 |
全置換術は「TKA(Total Knee Arthroplasty)」とも呼ばれ、損傷・変形のある膝関節全体の骨や軟骨を除去し、人工膝関節に置き換える手術です。
変形した関節をすべて除去するため、変形の程度の大きい膝関節や、靭帯に損傷が見られる場合でも施術が可能で、手術の適用範囲が広い点がメリットです。さらに、国内での人工膝関節置換術の90%が全置換術で、症例実績が豊富な点も安心に繋がります。
ただし、骨や関節に侵襲する範囲が大きいため、膝の可動域や歩行能力に影響を与える可能性があります。一般的に、術後6週間程度で杖を使用しての歩行が可能となります。
部分置換術(UKA)
メリット | デメリット |
---|---|
膝の可動域や歩行能力に影響を与えにくい手術時の侵襲範囲は狭い | 手術の適用範囲が狭いより高い技術が必要 |
部分置換術は「UKA(Unicompartmental Knee Arthroplasty)」と呼ばれ、損傷・変形のある膝関節の表面のみを取り除き、関節の一部を人工関節に置き換える手術です。
自らの関節や靭帯を温存して手術が行われるため、全置換術と比べて膝の可動域や歩行能力に影響を与えにくい点がメリットです。また、使用する人工膝関節の部品点数も少ないため、切開する範囲も狭く、患者への負担も軽減できます。
反対に部分置換術では、関節リウマチによる炎症性疾患は適用されず、手術の適用範囲が狭い点がデメリットです。ただし、全置換術に比べてメリットも大きく、適用範囲の症例であれば部分置換術が選択されるケースが多くなります。
手術件数が年々増加している
人工膝関節置換術の手術件数は増加傾向にあります。
2004年 | 約40100件 |
2005年 | 約44,000件 |
2006年 | 約49,800件 |
2007年 | 約55,400件 |
2008年 | 約62,900件 |
2009年 | 約68,600件 |
2010年 | 約69,100件 |
2011年 | 約70,800件 |
2012年 | 約75,600件 |
2013年 | 約81,300件 |
2014年 | 約83,000件 |
参考元:関節ライフ
2014年には既に日本国内で年間8万例以上の手術が実施されており、現在はさらに年間の手術件数が増加していると予想されます。豊富な症例実績があるため、安心して手術を受けられる点もメリットでしょう。
人工膝関節とは?

人工膝関節とは、変形・損傷した膝関節の代用として使用される部品です。主に、金属やセラミック、樹脂、プラスチックで成形されインプラントとも呼ばれます。
ここでは、人工膝関節の仕組みについてくわしく解説します。
膝関節の仕組み
膝関節は次の3つの骨によって構成されています。
- 大腿骨
- 頸骨
- 膝蓋骨
膝関節を構成する3つの骨は軟骨で覆われており、膝の可動時を滑らかにする役割があります。疾病により膝関節部の軟骨がすり減ると、関節の動きが悪くなり、可動域も制限される可能性があります。
また、関節は筋や腱で支えられているため、軟骨がすり減ると筋収縮や炎症を起こし、膝関節部に痛みを伴う場合があります。
変形した膝関節面の代用
損傷・変形した関節面を人工関節に置き換えれば、痛みや可動域の改善に期待できます。
また、人工膝関節置換術により、O脚やX脚になった下肢の変形も治療できます。O脚・X脚の方は、膝関節の片側のみがすり減り、下肢に変形が見られます。変形した膝関節を人工膝関節に置換することにより、改善を期待できます。
滑らかな膝関節の動きを再現
人工膝関節は、人体の膝関節の滑らかな動きを再現するため、膝関節と同様の3つの部品で構成されています。
- 大腿骨部
- 頸骨部
- 膝蓋骨部
関節の損傷・変形が比較的軽度な場合、部分置換術(UKA)によって一部のみを人工膝関節に置き換えます。
人工膝関節はコバルトクロム合金やチタン合金、セラミック、樹脂で構成されており、摩耗による耐性を持ちます。人工膝関節の耐久性はおよそ20年です。
人工膝関節置換術のメリット

人工膝関節置換術によるメリットは次のとおりです。
膝の痛みの原因を改善して和らげる
最大のメリットが、人工膝関節置換術により、膝の痛みの原因を改善して痛みを緩和できる点です。
膝関節が損傷・変形すると、筋収縮や炎症により、膝に強い痛みを伴います。とくに、関節リウマチによる炎症性疾患の場合、強い痛みにより歩行や日常生活に支障が生じます。
また、症状が進行すると、安静時にも痛みを感じる場合があります。膝関節置換術では、痛みの原因となる変形した膝関節を除去し、人工膝関節に置換するため、膝の痛みを原因から解消します。
変形を矯正して歩行を改善する
変形した膝関節を人工膝関節に置き換え、変形を矯正し、歩行を改善できる点もメリットです。膝関節の変形により歩行時に痛みが生じていた方の場合、人工膝関節置換術をおこない、歩行姿勢を改善できます。
また、人工膝関節置換術では、O脚・X脚の改善も期待できるため、変形していた脚をまっすぐに調整し、立ち姿の姿勢を美しく保てます。
人工膝関節置換術のデメリット

ここでは、人工膝関節置換術の前に、知っておくべきデメリットを解説します。
日常の動きに制限が出てくる
人工膝関節は、人体の関節の滑らかな動きを再現できるように設計されていますが、自然な関節と比べると日常の動きに制限が出てしまう点がデメリットです。
人工膝関節の可動域は自然な関節と比べて狭く、深く膝を曲げる動作をすると人工膝関節の破損に繋がるリスクがあります。そのため、日常生活での次のような動作は避けるようにしましょう。
- 正座やあぐら
- 自転車での上り坂の運転
- 和式トイレ
ズボンや下着を履く際にも、立ったまま着替えるのではなく、椅子に座っておこないます。軽い運動には制限はありませんが、膝に負担をかけやすいスポーツは避けておきましょう。
- テニス
- サッカー
- バレーボール
- バスケットボール
- ジョギング
日常的にスポーツをしている方の場合、人工膝関節置換術により制限がかかるため、デメリットを踏まえた判断が必要です。
また、人工膝関節の耐久期間はおよそ20年です。若い方が人工膝関節置換術をした場合、耐久期間に合わせて人工膝関節の入れ替えの手術が必要になる場合があります。
感染症を起こす可能性がある
人工膝関節置換術をした方の0.3%〜3%程度の方に、感染症による副作用が見られます。
人工膝関節の表面・周囲の細菌の繁殖による合併症で、感染症を発症した場合には再手術が必要になるケースもあります。とくに、糖尿病の方は感染症を起こしやすい特徴があるため、医師の判断が必要です。
また、切開・出血を伴う手術全般のリスクとして、血栓症・塞栓症を発症する可能性もあります。
膝の人工関節置換術に関するよくある質問

ここでは、人工膝関節置換術に関するよくある質問に、Q&A形式で回答します。
人工膝関節置換術の術後の注意点は?
術後は、膝の可動域の制限により、日常生活において膝に負担をかける動作を避けるようにします。
- 正座やあぐら
- 自転車での上り坂の運転
- 和式トイレ
また、深く膝を曲げる動作や、ジャンプを伴うスポーツは避けるべきです。
さらに、人工膝関節置換術の術後には感染症のリスクもあります。手洗いやうがいを徹底して、感染症に気をつけて生活をするようにしましょう。
人工膝関節置換術に年齢制限はある?
人工膝関節置換術に年齢制限はありません。
ただし、人工膝関節の耐用年数が約20年となるため、通常、若い患者に積極的に提案されることはありません。一般的には、加齢による膝関節の変形・損傷への治療として、60歳を過ぎた中高年の方が検討するケースが多くなります。
また、患者が高齢の場合にも、体力や免疫力を慎重に判断し、手術による負担によるリスクを検討します。
人工膝関節置換術後にリハビリは必要?
人工膝関節置換術の施術後には、可動域訓練や膝の筋力増強のためのリハビリが必要です。
一般的には、手術の翌日よりベッドサイドで膝の曲げ伸ばしをして、膝の可動域を拡げる可動域訓練をおこないます。歩行訓練が開始されるのは術後2〜3日ほどです。術後の歩行訓練は転倒のリスクがあるため、理学療法士のサポートの元、安全を確保して行われます。
また、疾患による痛みで、長期間膝を使わなかった方の場合、膝周りの筋力が低下しているケースがあります。歩行に必要な筋力を回復するため、筋力増強訓練もリハビリでおこないます。
人工膝関節置換術の費用は?
人工膝関節置換術の費用は約200万円です。そのため、3割負担で約60万円、1割負担でも約20万円と高額です。ただし、医療費が高額になった場合、「高額療養費制度」が使用できます。制度を使用すれば自己負担を軽減できます。
●70歳以上の方の場合
現役並み所得者 | 標準月額報酬83万円以上 | 多数該当:140,100円 |
標準月額報酬53万円~79万円 | 多数該当:93,000円 | |
標準月額報酬28万円~50万円 | 多数該当:44,400円 | |
一般所得者 | ‐ | 18,000円 |
低所得者 | ‐ | 8,000円 |
●70歳未満の方の場合
標準月額報酬83万円以上の方 | 多数該当:140,100円 |
標準月額報酬53万~79万円の方 | 多数該当:93,000円 |
標準月額報酬28万~50万円の方 | 多数該当:44,400円 |
標準月額報酬26万円以下の方 | 多数該当:44,400円 |
低所得者の方 | 24,600円 |
※自己負担限度額は総医療費によって異なります
参考元:全国健康保険協会
まとめ

人工膝関節置換術は、損傷・変形のある膝関節を除去し、人工関節に置き換える手術です。
損傷・変形の程度により、全置換術(TKA)・部分置換術(UKA)を選択します。術後は、痛みや違和感を解消でき、安定した歩行に改善できます。ただし、術後は日常生活や運動に若干の制限がかかる点に注意が必要です。
メリット・デメリットを検討し、人工膝関節置換術を考えてみるのもよいでしょう。
※本記事の情報は2023年1月時点のものです。
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<参考>
人工関節について