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高位脛骨骨切り術にデメリットはある?手術するメリットや回復までの期間について解説

高位脛骨骨切り術と呼ばれる手術を知っていますか。高位脛骨骨切り術とは、主に高齢者が悩まされる、膝の痛みに対する手術方法の一つです。

膝の痛みに関しては人工関節を使う方法が代表的ですが、ケースによっては、高位脛骨骨切り術も採用されています。膝の手術には複数手術法があるため、高位脛骨骨切術が自身に向いているかわからない、と思っている方も多いでしょう。

今回は高位脛骨骨切り術の概要や、メリット、デメリット、回復までの期間などを紹介します。高位脛骨骨切り術について知りたい方や、膝の痛みの改善策を知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

目次

高位脛骨骨切り術とは?

はじめに高位脛骨骨切り術について、簡単に解説します。

変形性膝関節症の疾患に対する手術の一つ

高位脛骨骨切り術とは、変形性膝関節症の疾患に対する手術の一つです。

変形性膝関節症とは、膝関節の軟骨の質が低下し、徐々にすり減ることから、歩行時に膝に痛みが生じる疾患です。
平らな箇所の歩行ができても、階段を昇るときや、正座の際に膝に痛みが出る場合があります。

変形性膝関節症を放置すると、次第にO脚が進行し、階段のみでなく、平らな場所での歩行の際も、膝に痛みを感じるケースもあるでしょう。

そのための対策として、高位脛骨骨切り術があります。高位脛骨骨切り術では、脛にある脛骨を切断して骨の向き合う角度を変えることにより、軟骨のすり減りや変形を最小限にできるのです。

高位脛骨骨切り術が適応される患者

高位脛骨骨切り術が適応される患者は、50歳~75歳の方に多いでしょう。

高位脛骨骨切術は、上記に当てはまる年齢で、変形性膝関節症の症状が中程度の方に薦められます。

ただし、年齢に関しては目安であり、若年者であっても症状が強い方は、高位脛骨骨切り術をすすめられる可能性があります。変形性膝関節症の症状が中程度までの方で、運動や、肉体労働に従事したい方のような活動性が高い方は、高位脛骨骨切術が適しているでしょう。

なお、変形性膝関節症の症状が中程度を超えると、人工関節置換術によって人工関節を膝関節に入れる手術をおこなうケースがあります。

しかし、人工関節の耐用年数は15年~20年程度とされており、再手術する際は初回の手術よりも難易度が高まります。

そのため、再手術を避けるために、65歳以下の方は高位脛骨骨切り術をすすめられるケースが多いです。

手術方法は2種類から選択

高位脛骨骨切り術には、オープンウェッジ法クローズウェッジ法があります。

オープンウェッジ法とは、脛骨の内側から外側に向かって骨を切り、切った部分を開いて金属板で固定する手術方法です。
手術から1か月程度で杖がなくても歩行が可能になり、退院もできるでしょう。皮膚への傷が少なく、外見に大きな影響を及ぼしにくい方法ですが、矯正角度に限度があります。

一方、クローズウェッジ法とは、脛骨の外側から骨をくさび状に切り取り、短縮させて矯正する手術方法です。大きい角度の矯正も可能ですが、オープンウェッジ法より身体への負担が大きくなります。

そのため、近年の傾向ではオープンウェッジ法が主流です。

高位脛骨骨切り術にデメリットはある?

ここからは高位脛骨骨切り術のデメリットを解説します。
懸念される主なデメリットは次の3点です。

順に解説していきます。

クリニックへの入院や回復までに時間がかかる

まずはクリニックへの入院が必要なことや、回復までに時間がかかる点が挙げられます。

従来までの手術方法は、骨盤から骨を移植してギプスで膝を固定する方法でしたが、近年では人工骨や金属プレートでの固定ができるようになり、入院期間が大幅に短縮されました。

しかし、それでも高位脛骨骨切術の手術には、3週間~4週間程度の入院が必要です。

また、関節機能を取り戻す必要があるため、退院後も数か月間のリハビリを受ける必要があるでしょう。人工骨を使った場合は、癒合するまでに数か月から半年程度かかる可能性もあります。

スポーツや肉体を使った仕事に従事するためには、1年程度の時間を要することも考えられます。

完全に治るまでは活動に制限がかかる

高位脛骨骨切り術の手術後は、完全に治るまでに1年前後の時間が必要です。退院後はデスクワークであればすぐに復帰可能ですが、いきなり激しい運動はおこなえません。

骨が癒合していないため、身体を充分に動かせるまでには、ある程度時間がかかります。骨が癒合するまでは、膝の痛みが続く場合もあるでしょう。

手術後は満足な膝機能となるまで、地道にリハビリを続けることが必要です。

膝の痛みが残る場合がある

人工骨が癒合した場合においても、膝の痛みが完全に治らないケースがあります。高位脛骨骨切術の手術を受けても、すり減った軟骨が元に戻るわけではないからです。

そのため、変形性関節症の症状や痛みが、多少残ってしまう可能性もあります。高位脛骨骨切り術によって膝の痛みが完全になくなる、と考えるのではなく、軟骨が痛むスピードを遅らせる、と思っておいた方がよいでしょう。

高位脛骨骨切り術によって、関節内部にかかる負担を軽減が可能であっても、変形性膝関節症の進行自体は止められないからです。

高位脛骨骨切り術のメリットは?

高位脛骨骨切り術は、デメリットのみではなく、メリットもあります。主なメリットを3点、解説します。

自身の関節を保存できる

高位脛骨骨切術は、切り取った骨を固定するために金属板を使うため、患者本人の関節の温存が可能です。

人工関節を使うと痛みが格段に軽減される一方で、傷口から菌が侵入して感染症を起こす可能性や、血栓を作ってしまうケースがあります。場合によっては、人工関節の緩みや摩耗が発生する可能性もあるでしょう。

近年では、人工関節自体や手術技法、手術器具などが進歩していることから、上記のリスクは軽減されていますが、デメリットが生じる可能性はゼロではありません。

自身の関節を残すことは、人工関節によるリスクを抑え、精神的な安心感にもつながります。

金属製の器具が体内に残らない

高位脛骨骨切り術では、手術後に経過を見ながら金属板を取り外す手術をおこないます。

そのため、術後に金属製の器具が体内に残りません。

金属板が体内に残ると、感染症のリスクが高まる可能性があります。金属製の器具が体内に残らない点は、患者の安心にもつながるでしょう。人工関節に置き換えた場合も同様であり、金属製の器具を体内に残すことから、感染症のリスクがあります。

また、人工関節のような金属製の器具を体内に残すと、膝関節の曲げ伸ばしがしにくいです。高位脛骨骨切り術は金属製の器具を取り除けるため、関節の可動域に制限がなく、身体を動かしやすい点がメリットです。

治療後はスポーツや重労働もできる

高位脛骨骨切り術の治療後は、スポーツや肉体労働も可能です。

骨が癒合した後に金属板を取り除きますが、その後は活動に制限がありません。活動に制限がなくなるまでに半年から1年程度の時間を要すものの、リハビリ後は手術前と変わらない生活ができるでしょう。

一方で人工関節を入れた場合は、金属の摩耗を防ぐために活動に制限がかかる場合があります。場合によってはスポーツや重労働ができないこともあるでしょう。

制限を超える活動を続けてしまえば、金属摩耗が進行して再手術が必要になる可能性があります。高位脛骨骨切り術であれば、人工関節を使用しないため、骨が癒着すると活動に大きな制限がなく、ストレスない生活を送れるでしょう。

高位脛骨骨切り術以外の変形性膝関節症を治す手術方法

変形性膝関節症を治す手術には、高位脛骨骨切り術以外の方法もあります。
高位脛骨骨切術以外の、2つの手術方法を紹介します。

順に解説していきます。

関節鏡視下手術

関節鏡視下手術とは、膝を切り開かずに、超小型カメラを挿入して手術する方法です。手術時間が30分ほどと短く、傷口は5mm程度が2~3箇所で済む点が特徴です。

患者にとって精神的にも身体的にも負担が少ない方法といえるでしょう。

手術の翌日には歩行が可能であり、回復も早いです。早ければ数日、遅くても1週間程度で退院できます。日常生活へも早期に復帰できるため、仕事や学業、家事育児などへの影響も少ないでしょう。

高齢者やスポーツ選手の膝の悩みは、多くのケースで関節鏡視下手術によって解決できます。

人工膝関節置換術

人工関節置換術とは、傷んだ膝関節の表面を取り除き、人工関節に骨を被せる手術方法です。使用する人工関節は症状の進行具合によって異なります。

症状が軽い場合は、骨の表面のみを削って置き換えますが、進行具合がひどい場合は、より多くの関節部材が必要です。症状によって関節の一部分、もしくはすべてを人工関節に置き換えるイメージを持つといいでしょう。

たとえば、しっかりと膝を伸ばせる、O脚やX脚の程度が軽い、肥満ではない、などの場合は、部分的に関節を置き換える手術になります。

人工膝関節置換術の手術後の効果で挙げられるのは、痛みの大幅な軽減や、左右の足の長さが揃うことです。

遠位大腿骨骨切り術

遠位大腿骨骨切り術とは、X脚に変形した膝を、正常な膝の形に戻す手術です。関節の外側の軟骨がすり減っている方が対象となります。

手術では、大腿骨の内側の骨を切り取り、内側に傾くように調整します。骨を切った部分は、プレートで固定します。手術後3週間程度は、負担をかけないように、器具や装具などを使う免過歩行が必要です。

また、手術後は大腿骨が回旋する動作に注意しましょう。

高位脛骨骨切り術に関するよくある質問

高位脛骨骨切り術に関するよくある3つの質問をまとめました。

順に解説していきます。

変形性膝関節症を放っておくとどうなる?

変形性膝関節症を放置すると、膝に水が溜まり、膝部分が熱を帯びる可能性があります。膝が思うように曲げにくくなり、痛みも伴うこともあるでしょう。

変形性膝関節症になると、症状が徐々に悪化します。初期段階であれば、動きはじめに違和感が生じたり、階段の昇り降りで痛みを感じたりする程度ですが、中期段階になると、膝を曲げきることや伸ばしきることが難しくなります。

膝の腫れや変形が起こる可能性もあるでしょう。末期症状になると、移動が困難になったり、安静時でも痛みがでたりするケースもあります。

基本的に症状が軽ければ軽いほど、治療の選択肢が広がり、改善も早くなるでしょう。

高位脛骨骨切り術後は左右で脚の長さが変わる?

高位脛骨骨切り術はO脚を矯正する手術です。手術では荷重線を膝の中心に近づけていくため、左右で脚の長さに違和感が生じるほど、変化がでることはありません。

手術後はリハビリを重ねることで、違和感が生じない歩行ができるでしょう。

高位脛骨骨切り術にかかる費用は?

高位脛骨骨切り術にかかる費用は、健康保険適用の3割負担で40万円前後、1割負担の場合は15万円前後が相場です。

ただし、高額医療制度が適用されるため、実際の負担額は1か月で10万円ほどです。これに入院時の食事代が加わります。

まとめ

高位脛骨骨切り術は、変形性膝関節症の治療のためにおこなう手術方法のひとつです。変形性膝関節症の症状が中程度の方で、50歳~75歳程度の方に主に薦められる手術でしょう。

変形性膝関節症は放っておくと症状が悪化し、膝の腫れや変形が起こることもあります。症状が軽いほど回復も早くなるため、症状に気づいたら、早めにクリニックを受診しましょう。

治療の際は、高位脛骨骨切り術の特徴やメリット、デメリットを確認し、手術を受けるか検討してみてください。

※本記事の情報は2023年2月時点のものです。
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